冬期トレ−ニングについて

1)はじめに

2)トレ−ニングの期分け

3)鍛練期(冬期トレ−ニング)について

4)鍛練期(冬期トレ−ニング)の期分け

5)鍛練期(冬期トレ−ニング) T期

6)鍛練期(冬期トレ−ニング)U期

7)鍛練期(冬期トレ−ニング)V期

8)コントロ−ルテストについて

9)冬期トレ−ニングでの注意点
 


1)はじめに

 このHPを見てくれている中高生の皆さん、トレ−ニングは順調に消化できていますか?

HPの「何でも聞いてみようBD」にトレ−ニングについての質問が何件か寄せられています。

私(staff-k)が技術スタッフとしてアドバイスしている「中学陸上」サイトのコ−ナ−でも同様の質問が全国の中高生から寄せられています。

よって私なりの冬期トレ−ニングについての考えを書いてみようと思い立ち、このコ−ナ−を立ち上げました。

 中高生の皆さんの冬期トレ−ニングの参考にでもなれば幸いです。


2)トレ−ニングの期分け
 トレ−ニングは計画的に行うことで、より良い効果が得られます。トレ−ニングをその目的に応じて期分けして行うことは非常に重要なことだと考えます。

中高生の場合、1年を通して期分けをすると、5月から10月までが「競技会期」とすることが多いと思います。この時期に中高生の最大目標となる、中総体、通信陸上、インタ−ハイ、などが行われます。

年末の全国駅伝などに出場する中高生を除く大部分の人にとって、11月は「移行期」と捉える場合が一般的です。

この時期は「競技会期」に蓄積した心身の疲れを取るとともに、これまでの試合内容やトレ−ニングでの反省点を明確にし、次の目標を設定し、計画していくときで、体力を維持するために完全休養はせず、専門外の種目や他のスポ−ツに積極的にトライし心身ともにリフレッシュすることを心がけてください。

この時期に、身体能力を把握するとともに、これからのトレ−ニングの指針を決め、各トレ−ニングの進度を測るという意味でコントロ−ルテストを行うことをぜひ薦めます(コントロ−ルテストについては、G項で詳しく説明します)

12月から4月までは、体力を総合的に高める為にトレ−ニング量を増やすとともに、基本的な技術練習を繰り返し練習し、正確な技術を身に付ける時期で「鍛練期(冬期トレ−ニング)」と区分けします。

以上により、一年を大きく分けると、5月から10月までの「試合会期」、11月の「移行期」、12月から4月(5月)までの「鍛練期(冬期トレ−ニング)」と3期に期分けすることが出来ます。
3)鍛練期(冬期トレ−ニング)について
 ここ青森県八戸市は北国としては比較的雪の少ない土地ですが、それでも2月、3月は積雪の為、練習が制約されることが多くあります。

八戸市唯一の第三種公認競技場の八戸東運動公園陸上競技場も12月から4月までは冬期閉鎖され使用できません。

よってロ−ドや公園などの野外走が練習の中心になります。

なかなか厳しい条件でのトレ−ニングになりますが、私はこの時期のトレ−ニングが翌シ−ズンの成績を左右すると言ってもいい程重要だという捉え方をしています。

この時期、12月から4月(北国では5月)までを3期に分けて、それぞれに意味をも持たせたトレ−ニングメニュ−を組むことで、試合会期にベストの状態で臨むことが出来ると思っています。


4)冬期トレ−ニングの期分け

鍛練期=冬期トレ−ニングということで以下冬期トレ−ニンに統一して述べます。

12月から5月までの冬期トレ−ニングを12月〜1月までのT期2月〜3月のU期4月〜5月までのV期に大きく分けます。
 T期は走り込み中心の走り込み期、U期はスピ−ド練習を入れていくスピ−ド練習移行期、V期は前半、より試合に即した練習の実戦期、後半は調整期とします。


5)冬期トレ−ニングT期
 

この時期、12月から1月にかけての2ヶ月は走り込み中心のトレ−ニングメニュ−となります。これから述べるU期、V期のトレ−ニングの基礎となるトレ−ニングですし、翌シ−ズンの試合会期を左右する非常に重要なトレ−ニング期です。

 この期のトレ−ニングは身体の器を大きくすることを主目的に行います。スピ−ドトレ−ニングやタイムトライアルなど、よりレ−スに即した質の高いトレ−ニングを行っても、それを受け入れる身体の器が小さくては、その効果は制約されたものになってしまいます。

それでは身体の器を大きくするにはどうすればいいのかというと、それには長くゆっくり走り込むことが一番効果があると思います。できればトラックではなく公園などの、下が土か芝生で適度にアップダウンのあるコ−スでのクロカン走やファルトレク走などの走り込みを勧めます。

起伏のあるコ−スでの走り込みは、筋力の向上にも役立ちますし、フォ−ムの矯正、心肺能力の向上、などに効果があります。

ここで注意することは、決してスピ−ドを追わないこと、スピ−ド、距離ではなく、時間で走る、時間走という捉え方をしてください。

繰り返しになりますが、ここでのトレ−ニングは、心肺能力の向上を図り、走るための足を作り、隅々まで酸素を送れる身体を作り、これから行う質の高い練習に耐えられる身体を作るという、基礎を作るためのものだということをぜひ理解しておいてください。

具体的な走り込みメニュ−の一例を書きますので参考にしてください。

   朝 練   本    練
30jog 40jog+150m×3
30jog 60分クロカン
30jog サ−キットトレ−ニング
30jog 60分クロカン走
30jog 40jog+150m×3
30jog 90分クロカン走又は120分ファルトレク走
30jog 休息日

6)冬期トレ−ニングU期(2〜3月)

この期では、5月からの試合会期に合せてスピ−ド系のトレ−ニングを入れていきますが、その内容は耐乳酸作業性閾値の向上を主目的として行います。

人の身体はある一定の走スピ−ドを超えると疲労物質の乳酸が急速に蓄積し始めます。いわゆる足があがらなくなる状態です。この乳酸が急速にたまり始める走スピ−ドをLTスピ−ドといいます。正確には血液中の乳酸量を測定して求めるのですが、研究値として全速力の8688%という近似値に置き換えることができます。

このLTスピ−ドをわずかに超えるスピ−ドで繰り返しトレ−ニングすることで耐乳酸作業性閾値(乳酸がたまり始めるスピ−ド)を高めることが可能になります。

このLTスピ−ドを求めるには、こちらを参考にしてください。12分間走による最大酸素摂取量の推定表」及び「最大酸素摂取量に基づくトレ−ニング内容の強度設定」

 この期の練習は土や芝生の上を走る野外走からトラックがメインになってきますし、練習強度やスピ−ドも徐々に高くなってきます。ウォ−ミングアップは勿論ですが、練習後のク−リングダウンはこれまで以上に十分行うように心がけてください。

この時期一番多い故障がシンスプリントです。硬い走路を繰り返し走ったり、練習の量・質が高くなったときに起こりやすい故障です。

練習後のアイシングを習慣付けるとともに、足底膜筋の強化及びストレッチ、ふくらはぎの筋肉の柔軟性を保つためのストレッチは毎日欠かさず行うことを薦めます。

疲れがたまってくると足裏のア−チが落ちてきますので、テ−ピングなどで補強するア−チテ−プなどが故障予防に効果があります。

U期トレ−ニングの具体的なメニュ−の一例です。

  朝  練 本     練
30jog      LTインタ−バル1,000m×5〜7本
30jog      60分jog+200m×5本
30jog      8,000〜12,000mP走
30jog      400m×10〜15本
30jog      12,000mjog
30jog      8,000〜10,000mB-up走
30jog      休息日

7)冬期トレ−ニングV期(4〜5月)

この時期にはそろそろトラックレ−スが入ってきますので、よりレ−スを意識した質の高い追い込んだトレ−ニングに移行していきます。

前半はレ−スぺ−スを意識したインタ−バル走やレペテ−ション、タイムトライアルなどで仕上げていきます。

当然追い込んだ質の高いスピ−ド系の練習がメインになりますので、間にジョグなどをはさんで疲労をうまく抜くようなメニュ−を組むことが必要です。くれぐれも強い練習を続けないようにしてください。強い練習を入れた後に適度な回復期をとると、人の身体はトレ−ニング前の能力より数段優れた能力を身に付けることができます。これを「超回復」といいます。この回復期をうまくとることが強くなる(速くなる)重要な要素になります。

またこの時期は良質の蛋白質なども合せてとる必要があります。激しい練習でダメ−ジを受けた筋肉が回復するのに栄養バランスの取れた食事は欠かせません。特に意識する必要はありませんが、バランスの良い食事を3食しっかりとるように心がけてください。

ここでは、疲労が抜けきらないうちに強い練習を続けて入れないこと、ややもするとオ−バ−トレ−ニングとなり、記録が伸びないばかりか、今後のトレ−ニングにも支障をきたすことになりますので十分注意してください。

オ−バ−トレ−ニングに陥ると、体重が減少する、安静時の脈拍数が多くなる、というような傾向がみられるようになりますから、アスリ−トとしては毎日の体重管理、安静時の脈拍チェックなどを行う習慣をつけましょう。

試合が間近に迫った後半は、調整中心のメニュ−になります。今まで追い込んできたトレ−ニングの疲れをうまく抜きながら、狙った試合に調子を合せていきます。

具体的には、狙った試合の10日位前から調整していきます。徐々に練習量を落しながら、途中に短い刺激をはさんでいきます。

ここで注意することは、たとえこれまでのトレ−ニングが順調に消化できていなくても、また練習不足だと感じていても、決して追い込んだ練習を入れないことです。

順調にトレ−ニングを積んで来ても、ここの調整で失敗すると、思ったような結果が出せないことがあります。

                           


8)コントロ−ルテストについて

 体力をチェックするために定期的に行う体力テストのことです。トレ−ニング進度のチェックやトレ−ニング課題を把握するために、トレ−ニングの節目節目に行います。

移行期に当たる11月に1回目のコントロ−ルテスト、走り込み期の1月に2回目、鍛錬期の3月に3回目のテストというように行い、それぞれの数字を比較検討すれば、トレ−ニング進度やトレ−ニング課題がはっきりしてきます。

主なチェック項目はスピ−ド、パワ−、最大筋力、筋持久力、全身持久力です。

一例をあげますので参考にしてください。

体力要因        測 定 項 目
スピ−ド        3050mダッシュ・3050m加速走
パワ− 立ち幅跳び、立ち5段跳び、砲丸フロント投げ、砲丸バック投げ
最大筋力 ウエイト種目(ベンチプレス、スクワットなど)
筋持久力        300m走、60秒間走
全身持久力       12分間走

9)冬期トレ−ニングでの注意点

 寒い時期でのトレ−ニングですから、ウォ−ミングアップは十分に時間をかけて行ないます。筋肉、関節等を十分に暖めてからトレ−ニングをはじめるように心がけてください。

 防寒対策には十分気を使いましょう。一枚余分に着込むくらいがいいでしょう。手袋、キャップを身につけるだけで寒さ対策に役立ちます。

 着替えは必ず用意するように、汗でぬれたままだと体温を奪われ風邪を引く原因になります。練習後は必ず着替えてください。

 ストレッチ・マッサ−ジ・アイシングなど身体のケアは十分に行ってください。徐々にトレ−ニングの量・質とも多くなりますので、練習の疲れはその日のうちに取るという意味からも練習後のアイシング、ストレッチは習慣付けるようにしてください。

 いろいろな意味からも、練習日誌をつけることは必要なことです。その日の体調、練習内容、体重などを記録することによって、今までのトレ−ニングにおける問題点、これからのトレ−ニング計画を立てる上で非常に役に立ちます。みなさんもぜひ練習日誌をつけることをお薦めします。

12月、1月はクリスマス、お正月など楽しい行事が続く時期でもあります。出て行くカロリ−より入ってくるカロリ−が多くなり、思った以上に体重が増えていたということもよくあることです。

育ち盛りの中高生にとって身体が大きくなるのは当たり前のことですが、1週間で23gも増えるようですと要注意です。

顧問の先生やコ−チは練習を見ることは出来ますが、食生活までの管理は出来ません。

規則正しい生活は当然ですが、食生活についても自分で考え、体重も含めた体調管理をしっかり行うようにしてください。

 冬期トレ−ニングにおいては、シンスプリント、アキレス腱炎、足底膜炎などの故障には十分気をつけないといけませんが、それと同じように貧血防止にも十分気を配ってください。特に女性の場合は貧血になる割合が高いようです。私が教えている中学校の陸上部でも血液検査の結果、ほとんどの女子生徒が程度の差こそあれ、貧血と診断されました。軽いうちは練習しながらでも改善することは可能ですが、重症になると完治まで何ヶ月もかかることになります。もちろんその間の練習もかなり抑えたものにならざるを得ません。シ−ズンに入る前に一度血液検査で貧血チェックをすることをお薦めします。